浅い呼吸による不調
浅い呼吸による不調として、以下のような症状があると言われています。
- 心肺機能の低下
- 冷え性
- 肩こり
- 胃腸の消化不良や食欲不信
- 緊張感やイライラ
- 理由のない不安
カラダに影響のあるものとしては、まず浅い呼吸による肺機能の低下があります。さらに、肺機能が衰えてくると慢性的な「酸欠状態」になることも。カラダの隅々まで酸素が行き届かず、血行不良になり不調を引き起こします。
また、浅い呼吸により自律神経が緊張状態になり、イライラしたり焦燥感を感じたりなどの”ココロの不調”にもつながります。
呼吸の役割と仕組み
呼吸による不調を改善するには、キホンとなる"呼吸の役割と仕組み”をおさらいしておきましょう。
無意識にしている呼吸ですが、知らないことも多いのではないでしょうか。
生理学的な役割とは
呼吸というと、「息を吸ったり吐いたりする」イメージですが、これは正しくは「換気」と言います。「呼吸」とは、カラダの中の細胞がエネルギー代謝をするために必要な酸素を取り入れ、また、そのエネルギー代謝で生じた二酸化炭素を排出する一連の流れです。
内臓が正しく機能するのも酸素のエネルギー代謝があるから。生命を維持するために呼吸が必要なのはこのためです。
酸素を取り込む流れ
息を吸い肺を膨らませ、肺の中に空気を取り込みます。肺で取り込んだ酸素を体内に取り込み、血液を通してカラダの細胞に酸素を届けます。
細胞がエネルギー代謝をすると二酸化炭素が生じます。その二酸化炭素は、また血液を通して肺まで戻していきます。最後に肺を縮ませて、二酸化炭素を体外に排出しています。
肺は自ら動かない
呼吸をすると、肺が膨らんだりしぼんだりしますが、肺自体が自ら伸びたり縮んだりするわけではありません。肺の周囲にある筋肉や骨の動きによって、伸ばされたり縮められたりしているのです。
肺を動かすために必要な筋肉を「呼吸筋(こきゅうきん)」と言います。10個ほどある呼吸筋の中で中心的な役割をしているのが「横隔膜」や「肋間筋」です。
上記は呼吸の生理学的な役割や仕組みですが、それだけではない”カラダとココロに及ぼす影響”も確認していきましょう。
呼吸が浅くなっていませんか?カラダと呼吸のつながり
生命を維持し、カラダを活動させている大事な呼吸ですが、以下のようなケースで浅くなってしまう場合があります。
- ①加齢などによる筋力低下
- ②姿勢の悪さ
- ③肥満
- ④長期間のマスクの装着
①加齢などによる筋力低下
先述した通り肺は自ら動かず、「呼吸筋」が肺を伸ばしたり縮めたりしています。
この呼吸筋が衰えることで、空気を吸う量・吐く量が減り、呼吸が浅くなってしまいます。
呼吸筋は加齢により自然と、確実に衰えていきます。呼吸が浅いとさらに筋力低下も加速。意識して呼吸筋を使い、鍛えることが大切です。
②姿勢の悪さ
猫背や前屈みなど、肺が圧迫されるような姿勢では空気を深く大きく吸い込めません。このような悪い姿勢が常に続くと、浅い呼吸がクセになってしまいます。
まずは胸を張り、大きく5回深呼吸してみましょう。後ほど紹介する「腹式呼吸」もおすすめです。
③肥満
肥満の場合は、肺だけでなく肺に空気を通す気道が圧迫されてしまうため、寝ている間に「無呼吸症候群」になっていることも。無呼吸、つまり呼吸が止まっているという状態です。
寝ている間に呼吸が止まると睡眠が障害されるだけでなく、心臓に負担がかかり、心臓の血管障害・脳の血管障害を起こしやすくなります。解決策としては、肥満の解消(減量)となります。
④長期間のマスクの装着
マスクをつけると口と鼻が覆われるため、深く大きく息を吸うことが難しくなります。マスクをしたまま大きく呼吸をするとマスクが口や鼻にくっついてしまうため、どうしても呼吸が浅くなりがちです。
マスクを長期間つけていることで、浅い呼吸が習慣化してしまうことも。特に子どもや高齢の方は注意が必要です。
運動すると呼吸が速くなるのは?
逆に、運動をすると呼吸が速く・深くなりますが、これは運動をして筋肉を使うと、必要な酸素量が安静時の10倍になるためです。
また、体温が上昇すると熱放射により呼吸数が増えるため、運動で体が温まると呼吸が増えることも要因の一つ。呼吸を多く・深くすることで肺活量が増えるため、運動は呼吸のトレーニングにもなります。
こんな時は浅い呼吸に。ココロと呼吸のつながり
呼吸が浅くなるケースとして、以下のようなココロの状態もあります。
①緊張感や不安感を感じている時
②焦っていたり、イライラしている時
③何かに夢中・集中しすぎている時
呼吸と自律神経の関係
「自律神経」とは、血圧や呼吸、動悸などを司る神経系です。緊張すると心臓がドキドキする(動悸がする)、といった経験があるのではないでしょうか。
同じく呼吸も自律神経と密接な関係にあります。リラックスしている時は呼吸も深くゆっくりとしていますが、緊張している時は呼吸が浅く・速くなりがちです。
緊張、イライラ、過集中している時は、神経が過敏になっている時。リラックスするために深呼吸をしてみましょう。呼吸を落ち着かせることでココロも落ち着きます。
こんな時は要注意
メンタル面が起因となる”呼吸が浅くなりがちなシーン”として、以下のようなものが挙げられます。このような時は、一度深呼吸をしてみましょう。
- ☑︎仕事などで、PCや書類に向かって集中して作業している時
- ☑︎試合前や発表会前、大事なプレゼンなどの前で緊張している時
- ☑︎家を出る前など、時間に追われている時
- ☑︎ケンカしている時
深い呼吸ができる「呼吸法」
自分の呼吸は大丈夫かな?と気になった人は、「胸式(きょうしき)呼吸」か「腹式(ふくしき)呼吸」かを確認することでわかります。
胸式呼吸とは
肋間筋(肋骨と肋骨の間の筋肉)を使い、肺を囲んでいる肋骨を動かして行われる呼吸法です。肺が横に広がるイメージです。 胸式呼吸は浅いですが素早い呼吸ができるため、運動後に「肩で息をする」ような時に使われます。
腹式呼吸とは
腹式呼吸は、肺の下にある「横隔膜」を上げたり下げたりして行われる呼吸法です。肺が下に伸びるイメージです。横隔膜の方が可動域が広いため、肺を大きく広げることができ、空気を肺いっぱいに取り入れることができます。
以下で、深い呼吸ができる腹式呼吸の呼吸法を紹介します。
▼腹式呼吸のやり方
- 立った姿勢、もしくは椅子に座ってお腹に手を添えます。
- まずは口からため息を吐くように、息を吐ききります。
- 鼻から3~5秒かけて息を大きく吸い込みます。このとき、お腹を膨らませることを意識しましょう。
- 鼻から3~5秒かけて息を大きく吐ききります。膨らませたお腹をへこませるように意識して、しっかりと息を吐き切るようにしましょう。
- 3~4を2分ほど行ってみましょう。
浅い呼吸を改善する”呼吸筋トレーニング”
呼吸を深くしっかりと行うために、肺を動かす呼吸筋を鍛えることが大事。部位的になかなか鍛えづらい筋肉ですが、筋肉なのでトレーニング可能です。
呼吸筋には、以下のような筋肉があります。
中心となる筋肉(胸〜お腹周り)
- 横隔膜(おうかくまく)...人体最大の呼吸筋で、胸郭の下にあるドーム状の筋肉
- 肋間筋(ろっかんきん)...肺の周りを囲む肋骨についている筋肉
- 腹斜筋(ふくしゃきん)...脇腹にある筋肉
- 腹横筋(ふくおうきん)...腹部の筋肉の中で最も深層にある筋肉
- 腹直筋(ふくちょくきん)...お腹の前面にある、いわゆる「シックスパック」の筋肉
補助的な筋肉(肩周り)
- 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
- 斜角筋(しゃかくきん)
- 僧帽筋(そうぼうきん)
2大呼吸筋である「横隔膜」と「肋間筋」は必須で鍛える筋肉。この筋肉に効くトレーニングを紹介します。
呼吸筋トレーニング① 横隔膜トレーニング
呼吸筋の2大筋肉のひとつであり、腹式呼吸に最も大事である「横隔膜」を鍛えるトレーニングです。
横隔膜トレーニング
- 仰向けになって、膝を少し立てます。手は両側に少し広げるといいでしょう。
- お腹の上に本やクッションなど、少しだけ重さのあるものを置きます。
- お腹の上に乗せたものが上がるように意識して、大きく息を吸いましょう。
- 10回呼吸を行います。慣れてきたら20回、30回と回数を増やしてみましょう。
呼吸筋トレーニング② 肋間筋トレーニング
肺を囲っている肋骨についている筋肉、「内肋間筋」を鍛えるトレーニングです。
肋間筋トレーニング
- 仰向けになります。足はそろえて伸ばし、手のひらを床側に向けて、お尻の下に入れます。
- 手は伸ばしたまま、肩甲骨を寄せるようにして、両腕をカラダの下に入れます。
- 息を吸いながら、胸を天井に向けて持ち上げます。
- 胸と肩を持ち上げながら、頭頂部を床につけるように首を伸ばします。
- 手のひらと肘で床を押し、体を支えます。
- その姿勢のまま、ゆっくりと呼吸をしましょう。
- 元の仰向けの姿勢に戻ります。1〜6の順番と逆になるよう、ゆっくり戻しましょう。
正しい呼吸法を身につける、おすすめ運動習慣
息を吸う/息を出す動作は、体の筋肉の緊張を緩和させるので、呼吸を意識して運動を行うとストレッチ効果やトレーニング効果もより高まります。
腹式呼吸を意識する運動習慣として、ヨガ、気功、太極拳などがあります。どれも動作に合わせて呼吸をするため、自然と深く、ゆっくりとした呼吸に。呼吸を「気」ととらえ、体内にたまった「汚れた気」を排出するという考え方もあります。
特にヨガは年齢を問わず、女性にも男性にも人気。呼吸法が気になる人は、ヨガから始めると呼吸を意識しやすいかもしれません。
呼吸で不調改善!カラダとココロのために深呼吸しよう
呼吸が及ぼすカラダとココロへの影響を改めて知ると、普段何気なくしている”呼吸”の大事さが発見できたのではないでしょうか。
呼吸するための肺は「呼吸筋」に動かされていること、その呼吸筋は加齢により衰えていくことなど、少しヒヤリとする気づきもあったかもしれません。
また、フィジカル面だけでなく、忙しい日々でメンタル面の余裕がなくなるといつのまにか浅い呼吸になっていることも。1日5分「呼吸筋トレーニング」をすると、呼吸筋が鍛えられるだけでなく、ココロのリラックスにもなります。朝や夜、ベッドの上のルーティーンとして気持ちのいい新習慣を始めませんか?