速歩きによる健康効果
速歩きとは
「速歩き」とはウォーキングの速度を少し上げて行うこと。具体的には、一般的な歩行速度(時速2.9〜3.6km程度)よりも少し速めの「時速5〜7km」を目指して行うウォーキングです。
少し速く歩くため「運動効果」が上がるのは想像しやすいですが、なんと「健康効果」にも驚くべき影響があることが研究の結果で報告されました。
健康効果① 健康寿命が伸びる
ハーバード大学が歩行速度と健康寿命の関連性について行った調査では、通常時速3.2km未満で歩く人に比べて、時速3.2〜4.8kmの人は1.9倍、時速4.8km以上の人は2.68倍も健康寿命が長いことが報告されました。
つまり、速く歩くことで健康寿命を延ばせる可能性があるのです。
「健康寿命」とは健康上の問題で行動を制限されることなく日常生活を送れる期間のこと。寿命から介護を要する期間を除いたものを指します。人生100年の現代では「健康寿命」を長くし自分らしく過ごせるかが注目されています。
健康効果② 死亡リスクが低くなる
1986年から2000年に行われた研究から、「65歳以上の高齢者は、歩くスピードが毎秒0.1m速くなるごとに死亡リスクが0.88倍低くなる」という結果が明らかになりました。(出典:Gait Speed and Survival in Older Adults)
死亡リスクとは、ある年齢までにある病気で死亡する確率のこと。2022年の日本人の死亡リスクとしては「病気」による割合が高くなっています。
健康効果③速歩きで筋肉量が増加
速歩きは、体の筋肉の多くを占める"下半身"を鍛えるだけではなく、腕をしっかり振ることで背中などの全身の筋肉が鍛えられます。
筋肉には体に機能するさまざまな役割があり、血糖値の上昇を防いだり、免疫力を上げるなどの健康と深いつながりがあります。筋肉と健康の相関については以下の記事でまとめていますので、詳しく知りたい人はご覧ください。
運動初心者や忙しい人にうれしい!”速歩き”の3つのメリット
健康のための運動なら「速歩き」じゃなくてもいいの?と気になりますが、運動の中でも「速歩き」をおすすめする理由があります。その主な理由がこの3つ。
①運動初心者にも!ランニングと比べて体への負担が少ない
②速歩きでランニングと同等のカロリーを消費
③忙しい人にも!日常生活に取り入れやすく続けやすい
①運動初心者にも!ランニングと比べて体への負担が少ない
運動効果が高い速歩きですが、関節への負担は少ないのも魅力です。ランニングの地面反力が体重の2.2倍に対し、速歩きは体重の1.5倍で負担減。
ランニングより関節を痛めにくいため、「久しぶりの運動で体がついていくかな」「最近体重が増えて膝の負担は大丈夫かな」など気になる人は、速歩きから始めてみましょう。
特に腰・膝・脚に不安がある人には速歩きがおすすめです。
②ランニングと同等のカロリーを消費できる
通常の歩行は時速4km程度ですが、時速5〜7kmの「速歩き」はゆっくりとしたランニングの消費カロリーと同等レベルになります。
▼速歩きの体重別カロリー消費量(20分あたり) ※時速6.4kmの場合
また筋肉量がアップすると基礎代謝もアップ。速歩きをしていない時間もカロリーが消費されやすい体になり、健康的でヘルシーなカラダ作りが叶います。
③忙しい人にも!日常生活に取り入れやすく、続けやすい
運動をする時間がない、続かないという人にもおすすめです。
速歩きは5分でも効果があるので、忙しい人もスキマ時間で始められます。駅やお店まで、いつも歩いている速度をちょっと速くするだけでOK。昼食後に10分、外出時に遠回りして5分など、1日何回かに分けてもいいので、日常に取り入れやすく続けやすいです。
ウォーキングを始めてもマンネリを感じて続かなかった人も、速歩きの「時速5〜7km」を目標にしてみましょう。速度を測ることでモチベーションアップします。ウォーキングの効果が薄れてきた人も、ステップアップとして速歩きに挑戦してみるのもいいでしょう。
速歩きの効果を得るためのポイント
速歩きの効果を得るために、気をつけて欲しいポイントが3つだけあります。
ポイント1. やや大股の歩幅を意識する
ポイント2. 前後にしっかり腕を振る
ポイント3. 無理して続けない
ポイント1. 「やや大股の歩幅」を意識する
歩幅を広くすることで、自然と歩行速度が上がり速歩きになります。足を開きすぎると転倒や股関節に負担がかかる可能性が上がるので、身長の約50%の幅を意識しましょう。かかとで着地し、つま先で地面を軽く蹴るように歩くと大股歩行がしやすくなります。
ポイント2. 前後にしっかり腕を振る
肘を90度に曲げ、腕を前にも後ろにもしっかりと振って歩くようにしましょう。腕を振ると歩くスピードが速くなります。
他にも腕をしっかり振ることのメリットはたくさん。
・腕を使うことで全身をまんべんなく使った歩き方になり、体全体の運動効果もぐっと上がります。
・足への負荷が減ります。
・腕を後ろにしっかり振ることで胸が開き、猫背にならず姿勢が良くなります。
ポイント3. 無理して続けない
手軽にできるとはいえ、速歩きは普段よりも強度が高い運動で、疲労や負担が増えます。無理をしてケガにつながらないよう、以下のことを意識しましょう。
・速歩きをしていてちょっとつらいと感じる場合、ストレッチをして足の柔軟性を高めてみましょう
・脚に筋肉がついてくるまでは速歩きの速度を無理しない程度から始めて、徐々にあげていきましょう。
・体の負担が増えるケースとして、靴が合わなかったり姿勢が悪かったりする場合があります。確認してみましょう。
「ウォーキングの正しい姿勢をしっかり知りたい」「上手くできているか心配」という人には、”整えウォーク”というプログラムがあります。姿勢良く、速く歩くための正しい体の使い方を楽しく身につけられるプログラムです。
【コラム】自分の歩行速度を知る方法
速歩きを始めると「自分の速度は速歩きになっているのだろうか」と気になってくるのではないでしょうか。今の自分の歩行速度を把握することで目標もでき、やる気もアップします。
下のフォームに「歩いた距離」と「時間」を入力して、自分の速度を測ってみましょう。
歩行速度がわかります
速く歩けていた人もいれば、思った以上に遅かった…という人もいるのではないでしょうか。
例えば、いつも行く駅までの距離を調べておき、日々少しずつペースを速くしてみるなどで「時速5〜7km」にトライしてみましょう。
道の距離はスマートフォンやPCのmapアプリで測ることができます。曲がっている道なども細かく測れますので、以下を参考にしてみてください。
例)Google mapでの距離の測定の仕方
①map上をタップし、スタート地点を設定します。
②「距離を測定」をタップすると、ゴールを設定する○のアイコンが現れます。
③道が曲がっている場合は「地点を追加」ボタンから地点を追加できます。
④地点を追加し、道に沿って細かく距離を測ることができます。
⑤スタート地点から最後の○までの距離が表示されます。
速歩きに関するQ&A
速歩きに関するよくある疑問や、メリット・デメリットに回答します。
Q.速歩きを始めると痩せる?
A.摂取カロリーが変わらない場合、減量効果は期待できます。
速歩きをすることで普通のウォーキングよりも消費カロリー量は大きくなるため、減量の手助けになります。
ただ、動いた分食べ過ぎてしまってはあまり効果は期待できません。速歩きだけでなく食事の改善の意識も持つとよいでしょう。
Q.デメリットはある?
A.速歩きだけでなく運動全般に言えることですが、ケガをするリスクがあります。
日常生活よりもやや強めの負荷が体に入るため関節や筋を痛める可能性はあります。また、転倒するリスクもあります。
これらを回避するためには、腕をしっかりと振り全身を使うこと、また徐々にペースを上げていくことがおすすめです。
ほかにも、人が多い場所だとぶつかる可能性があるので、周囲に配慮しつつ、広い道や公園など、歩きやすい場所を選んで行いましょう。
Q.1日何分くらいやるといい?
A.1日35〜45分程度がおすすめです。
厚生労働省より成人は1日に60分以上運動することが推奨されていますが、これは3メッツで計算されています。メッツとは運動の強さを表す指標で、その運動がどれくらいハードな運動なのかを表します。
速歩きは4〜5メッツ程度の強さです。4〜5メッツで同じだけ運動をするとなるとおおよそ6〜7割程度の量をすればOK。よって、35〜45分程度を目安にするとよいでしょう。
Q.速度がわからなくてもいい?
A.速度を測るのが面倒な場合は、「いつもよりちょっと速い」でOKです!
速度よりも、先程あげた3つのポイント①大股で歩く、②しっかりと腕を振る、③無理をしない、を意識すれば効果はあります。いつも同じ道の場合は、時間だけ測っておくのも成長が感じられていいですね。
速度のイメージをつかみたい人は、ジムのウォーキングマシンで正確に測ることもできます。
ちょっと速く歩くだけの「速歩き」で健康な毎日を
人生100年時代。イキイキとした毎日を過ごすために「速歩き」を始めてみませんか?
最初は5分の速歩きからでOK。その日のコンディションにあわせて自分のペースでやってみましょう。ちょっとそこまでの距離でも、全身の筋肉を使っている実感を得られると思います。
少し速く歩くだけで、健康寿命を始めさまざまな恩恵を受けることができる「速歩き」。始めた直後は疲れを感じていても、続けていくうちに気持ちよくなっているかも?そのときには前の自分とはカラダもココロも大きく変わっているはずです。