筋肉痛とは運動によって生じる筋繊維の炎症
そもそも「筋肉痛」とは?
筋肉痛とは、運動やトレーニングなどにより筋肉に負荷がかかり、筋繊維(きんせんい)が傷つくことで起こる炎症です。
筋繊維自体は痛みを感じませんが、炎症が起こることで痛みが感知されます。筋繊維は細いため日常動作でも多少傷つきますが、その程度では痛みとして感じません。普段よりも強度の高い運動をしたときや日ごろ行わない部位の運動を行ったとき、多くの筋繊維が一度に損傷します。すると、いつもとは違った痛みを感じるのです。
ちょっと経ってから筋肉痛になるのはなぜ?
筋肉痛は、運動直後よりも"翌日”や”数日してから”感じられることが多くあります。これは遅発性(ちはつせい)筋肉痛と呼ばれているものです。筋繊維が傷つき炎症が起きたとき、その炎症を感知するまでのタイムラグが、遅れてくる筋肉痛の正体です。
ちなみに、「歳をとると筋肉痛が遅くなる」とよく言われますが、これは証明されているものではありません。日頃の運動量によって、ちょっと運動しただけで筋肉痛になるかならないか、はあるようです。
筋肉痛を予防する3つの方法
久しぶりの運動で筋肉痛になるのは仕方がない、と思っていませんか? なんと筋肉痛は「予防」することができるんです。
筋肉痛の予防には、以下の3つがポイントです。
1)水分補給と食事
2)運動習慣
3)準備運動(ストレッチ)
1)水分補給と食事
筋肉痛の予防として効果的なのが「水分補給」と「エネルギー摂取」「バランスの良い食事」です。
水分が不足すると体内の血液は巡りが悪くなってしまいます。すると、運動中のパフォーマンスが下がって、筋肉は疲労しやすくなり筋肉痛につながってしまう、という悪循環に。運動中はもちろん、運動の前後にも適度に水分を摂るようにしましょう。
また、運動の前に「糖質」を含む食べ物を軽く摂取しておくのも効果的。筋肉のエネルギーになるので運動中も筋肉を元気に保ちます。ただし、運動中と運動後は筋肉にたくさんの血液が必要です。そのため胃の消化作業に必要な血液が不足してしまうと、消化不良につながって気分が悪くなってしまうことも。運動前の糖質摂取は30分くらい前を目途に、エネルギーゼリーやハチミツなどを軽く摂取しておくのがおすすめです。
運動をした日の食事は、筋繊維の修復や疲労の回復に必要なタンパク質がしっかり摂れるバランスの良い食事を心がけましょう。普段の食事で不足しがちなビタミンとミネラルをしっかり摂ることも意識してください。筋肉の疲労軽減や回復、成長のための大事な栄養素です。
2)運動習慣
筋肉痛は普段どおりの動きでは起こりません。いつもより負荷を高くしたり、長時間行ったり、”普段しない動き”を行ったときに筋肉痛の症状が現れます。
日頃から運動をしている人は、歳に関係なく筋肉痛になりづらいようです。久しぶりに運動した人は筋肉痛になりやすいですが、続けていくと同じ負荷でも筋肉痛を感じないようになりますよ。
3)準備運動(ストレッチ)
慣れない運動・動作をするときは、準備運動をして使う部位のまわりをほぐしましょう。無駄な緊張や必要以上の力みがなくなり、スムーズな動きができるため筋肉痛の度合いも和らぎます。
また、運動後にも十分なストレッチを行うこともその後の筋肉痛を抑えることに役立ちます。疲労物質が排出されやすくなり、筋肉の緊張もほぐれるため、運動後のストレッチは筋肉の回復速度を早めるといわれています。
筋肉痛を早く治したい!そんなときにおすすめの方法
このように予防しても、完全に防ぐことは難しい筋肉痛。明日までに治したいのに、ふくらはぎや太ももが悲鳴を上げている!そんなときに試していただきたい方法を4つまとめました。
1)痛みのある部位を冷やして休める
2)全身の血流を良くする
3)7時間程度ぐっすり眠る
4)ストレッチをする
1)痛みのある部位を冷やして休める
筋肉痛が出ているときは、痛みのある場所に炎症が起きているため。すでに痛みがある場合は、冷やして炎症を抑えましょう。
2)全身の血流を良くする
炎症が収まってきて痛みの感じ方が軽くなってきたら、血流を良くするケアも効果的。疲労物質を排出させ、筋肉痛の回復を早めることができます。
お風呂などで体を温めるときはあまり高温にしすぎず、38〜40度程度でリラックスできる温度で。また、筋肉の回復期に軽い有酸素運動を行うことも、全身の血流が良くなるのでおすすめです。
3)7時間程度ぐっすり眠る
炎症反応が起きている筋肉を回復させるためには、睡眠も大事です。特に入眠してから3時間後ぐらいまでは成長ホルモンがよく分泌される時間帯といわれています。
運動をした日は夜更かしせずにぐっすり寝てみましょう。良質な睡眠による筋肉の早期回復が見込めます。睡眠時間は短すぎず長すぎず、7~8時間程度が筋肉のスムーズな回復にベストです。
夜遅くのカフェイン摂取やデバイス閲覧は入眠や深い眠りの妨げになるのでほどほどに。でも運動した日は疲れてすぐに寝てしまうかもしれませんね。
4)ストレッチをする
筋肉痛になると更なる運動はできない気持ちになりますが、軽いストレッチであれば筋肉痛に効果的です。ストレッチは筋肉の緊張を和らげたり、老廃物を排出させたりする効果も。なかなか治らない筋肉痛を和らげる簡単なストレッチを紹介します。
よく筋肉痛になりがちな部位は「ふくらはぎ」「太もも」の2つ。くわえて「全身が筋肉痛」な人のための、3つの部位別ストレッチです。
【部位別】筋肉痛を早くなおすためのストレッチ
①「ふくらはぎ」の筋肉痛に効果的なストレッチ
②「太もも」の筋肉痛に効果的なストレッチ
③「全身」の筋肉痛に効果的なストレッチ
①「ふくらはぎ」の筋肉痛に効果的なストレッチ
準備運動の定番、”アキレス腱伸ばし”のポーズです。アキレス腱だけでなく、ふくらはぎの筋肉を伸ばすことができるストレッチですす。
■やり方
- 立った姿勢から、肩幅より少し広く足を前後に開きます。
- 前足の膝を曲げて、体の重心を前足に乗せるように倒します。両手を前足の膝に置いて体を支えてもOK。
- 後ろ足のかかとは地面につけます。このとき、ふくらはぎが伸びているのを意識しましょう。
- 前足と後ろ足を交代し、5セット行いましょう。
■ふくらはぎストレッチのポイント
両足のかかとが浮かないようにして、膝の裏〜ふくらはぎまでをしっかりと伸ばしましょう。
②「太もも」の筋肉痛に効果的なストレッチ
太ももの前側、後ろ側どちらもほぐす事ができるストレッチ。筋肉痛で股関節まわりが痛く、歩きづらい人にもおすすめです。
■やり方
- 正座で床に座り、ゆっくり上体を後方に倒して太ももの前側を伸ばします。
- そのまま仰向けになれる方は仰向けになります。難しい場合は脚を伸ばして仰向けに寝ます。
- 寝たまま両膝を立て、右足の膝裏を両手で持って右太ももをお腹に引き寄せます。できる範囲で右膝を伸ばし太ももの裏側をストレッチします。
- 右膝を曲げ、両手を離して両膝を曲げて立てた姿勢に戻ります。
- 右足を一歩右外側に踏み出し、右膝を内側に倒したり外側に倒したりして股関節まわりと太ももを全体的にほぐします。10回を目安に、気持ちよく伸びるまで行いましょう。
- 反対側も3以降の動作を行います。
■太ももストレッチのポイント
5の動作のときは心地よい方向に倒したまま動作を止めて、ゆっくりストレッチしても良いでしょう。無理に膝が床につくまで下ろす必要はないので、痛みのない範囲でゆらゆら揺する程度でも構いません。
③「全身」の筋肉痛に効果的なストレッチ
もう全身が痛い、という人にはこちら。全身の筋肉痛や疲労感の回復には、背骨を大きく動かすストレッチが効果的です。
■やり方
- 床の上にあぐらをかくなど安定した座り方で座ります。
- 両手を胸の前で組み、息を吐きながら手を前方に伸ばして背中を丸め、おへそを覗き込みます。
- 息を吸いながら組んだ手を天井に伸ばし、背骨を上下にしっかりストレッチします。
- 息を吐きながら両手を離し、腰の後ろで組みます。
- 息を吐きながら背骨をねじって左に向き、吸う息で正面に戻ったら吐きながら右にねじります。
- 息を吸って正面に戻ったら、吐く息で前屈します。
- 息を吸いながら体を起こしましょう
■全身ストレッチのポイント
呼吸をゆっくり行いながら、その呼吸に合わせた速さで行うことで固まった筋肉を伸ばすことができます。腕の付け根、脚の付け根、体幹と全身がほぐれてきたら、今度は開脚して左右の脚に向かって前屈する動作を入れても良いでしょう。
筋肉痛は予防・早めになおす方法がある
痛みが自然とひくのを待つもの、と思っていた筋肉痛ですが、早めになおす方法も予防策もあります。筋肉痛の度合いやもともとの個人の運動量によって回復時期には個人差があるので、痛みをみながら試してみてください。
運動を続けていると、同じ負荷でもだんだん筋肉痛を感じなくなってきます。なんだか成長を感じませんか?筋肉痛は今までの自分よりも少し頑張っている証拠かもしれませんね。