【予備知識】花粉症はなぜ起きるのか
多くの人が悩まされる花粉症ですが、そもそもなぜ発症するのでしょうか。花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉を体の免疫システムが異物(アレルゲン)と誤認し、過剰に反応することで起こるアレルギー疾患です。
スギやヒノキの花粉は種類によりますが、一般的に3~6月頃にピークを迎えます。さらに、イネやヨモギなどの花粉は5~9月頃まで飛散するため、これらにもアレルギーがある場合、年間の半分近くを花粉症の症状とともに過ごさなければなりません。
決して珍しい疾患ではなく、ウェザーニュースの調査では日本人の2人に1人が花粉症を発症しているといわれています。そのため、春先は特に多くの人がくしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状に悩まされます。
適切な治療や対策を行えば、症状を軽減することは可能ですが、毎年春先になると「また花粉症の季節が来た」と憂鬱に感じる方も多いでしょう。
命に関わる病気ではないものの、ランニングを習慣にしている方にとっては大きな悩みの種です。本記事では、花粉症シーズンでも快適に走るための方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
花粉症と免疫の関係性
花粉症を発症するメカニズムは次の通りです。
ステップ | 体内で起こること | 影響・症状 |
①花粉の侵入 | 花粉が鼻や目の粘膜に付着する | 体内に花粉が入り込む |
②抗体の生成 | 免疫細胞が花粉を「異物」と認識する | 花粉に対する抗体(IgE抗体)を作る |
③再び花粉が侵入 | 体が警戒し、抗体が増加する | 花粉を攻撃しようとする防御反応が強まる |
④ヒスタミン放出 | 肥満細胞がヒスタミンなどの化学物質を放出する | 鼻や目の粘膜が刺激され、炎症が起こる |
⑤アレルギー症状の発症 | くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみが発生する | 花粉症の症状として現れる |
花粉症は、体の免疫システムが花粉を「異物」と誤認し、過剰に反応することで発症するアレルギー疾患です。最初は症状が出なくても、繰り返し花粉を浴びることで発症する可能性が高まります。
体内に花粉が侵入すると、免疫細胞が花粉に対する抗体を作成。この抗体が一定量を超えると、次に花粉が入ってきたときにヒスタミンなどの化学物質が大量に放出され、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が現れます。
また、花粉症の有病率は約10年ごとに10ポイント増加しているといわれており、花粉を浴びる回数が多いほど発症リスクも高まります。そのため、花粉との接触を減らし、免疫バランスを整えることが、予防のカギとなります。
花粉症は治療または予防で対処しよう
花粉症の対策には「治療」と「予防」の両方が重要です。症状が出てしまった場合は、適切な治療を受けることで症状を和らげ、日常生活の負担を軽減できます。一方、花粉を避ける工夫をすれば、症状の悪化を防ぎ、快適に過ごしやすくなるでしょう。
以下に、花粉症の治療と予防をまとめました。
■治療(症状を和らげる)
対症療法 | 抗ヒスタミン薬、点鼻薬、点眼薬でくしゃみや目のかゆみを抑える |
免疫療法 | アレルゲン免疫療法(舌下療法など)で体質改善を目指す |
■予防(花粉との接触を減らす)
花粉を避ける | マスク・メガネの着用、花粉の多い時間帯の外出を控える |
花粉を室内に持ち込まない | 露出の少ない服装、手洗い・洗顔・換気方法の工夫、室内干しを活用する |
治療と予防を組み合わせることで、花粉シーズンでも快適に過ごせます。適切な対策をして、屋外での趣味や運動を楽しみましょう!
花粉症シーズンでもランニングを楽しむ4つのコツ
花粉症シーズンでも、工夫次第で快適にランニングを楽しむことができます。大切なのは花粉をできるだけ避けることと症状を抑える対策をすることです。
服装や時間帯を工夫するだけでも花粉の影響を軽減できますし、根本的な治療を検討するのも一つの方法です。また、どうしても外で走るのが難しい場合は、室内で走れる環境を活用するのもおすすめです。
ここでは、具体的な4つのコツを紹介していきます。
花粉を避ける格好になる
ランニングをする際は、できるだけ花粉を寄せ付けない服装を意識しましょう。帽子やマスク、サングラスを着用することで、花粉が顔に直接付着するのを防げます。特に服の素材選びが重要で、ウールやフリースは花粉が付着しやすいため避け、表面が滑らかなポリエステルなどの化学繊維を選ぶのがおすすめです。
マスクが息苦しいと感じる場合は、通気性の良いスポーツ用マスクを試してみるのもよいでしょう。また、事前に抗ヒスタミン薬などの対症療法を行い、症状を抑えてから走ることで、より快適にランニングできます。
さらに、ランニング後は花粉を落とすために目を洗浄する、顔を洗うなどのケアを取り入れると、症状の悪化を防ぎやすくなります。
花粉の少ない時間帯を狙う
花粉症シーズンには、ランニングの時間帯を工夫することで、花粉の影響を軽減できます。花粉は日中の11時~15時頃に特に飛散しやすくなり、その後一時的に落ち着くものの、日没前後の夕方には再び増加することがあります。
これは、夕方の気温低下による空気の対流で、上空に浮いていた花粉が地上に降りてくることや、地面に落ちていた花粉が再び舞い上がることが原因です。そのため、花粉の飛散量が多い春先には、日中や夕方のランニングを避け、花粉が少ない早朝や夜に走るのがおすすめです。
また、気象予報で花粉の飛散状況を確認し、花粉が少ない日や時間帯を選ぶことも、快適なランニングを続けるために効果的な方法です。
免疫療法を受ける
免疫療法を行うことで、花粉が体内に入ってもアレルギー反応が起こりにくくなり、症状の軽減が期待できます。代表的な治療法として「舌下免疫療法」と「皮下免疫療法」があります。
舌下免疫療法は、アレルゲンを含んだエキスを舌の下に投与し、体に少しずつ慣れさせる方法です。花粉症の根本治療として期待されており、長期間続けることで体質改善が見込めます。
皮下免疫療法は、重症のスギ花粉症に対して行われる治療で、抗IgE抗体(オマリズマブ)を皮下注射することでアレルギー反応を抑えます。特に、薬では症状をコントロールしにくい場合に検討される方法です。
こうした免疫療法は治療だけでなく予防としても有効です。花粉症の症状が軽減されれば、花粉シーズン中でも快適に過ごせるようになり、ランニングもより楽しめるでしょう。
室内でも走れる場所を見つける
花粉症の時期は、屋外でのランニングがつらいと感じることもあります。その場合は、室内で走れる環境を活用するのも一つの方法です。
たとえば、地方自治体が運営する体育館をチェックしてみましょう。比較的リーズナブルな料金で利用できる施設も多く、花粉の影響を受けずに走れます。また、フィットネスジムのランニングマシンを利用するのもおすすめです。ジムに通っている方なら、天候や時間に左右されず、安定した環境で走ることができます。
さらに、ランニングマシンはクッション性があり、足腰への負担を軽減できるため、関節へのダメージが気になる方にも適しています。花粉のシーズンも、工夫しながら快適にランニングを続けましょう。
花粉症とランニングに関するQ&A
Q.ランニング中に鼻水が止まらない場合はどうしたらいい?
ランニング中に鼻水が止まらなくなったら、一度立ち止まり、ティッシュやハンカチで鼻水をしっかり処理しましょう。鼻水が続くと呼吸が苦しくなり、走りに集中できなくなってしまいます。
どうしても止まらない場合は、花粉の飛散が特に多い時期は屋外ランを控えるのも選択肢のひとつです。どうしても外で走りたい場合は、鼻腔拡張テープや点鼻薬を使用することで、鼻づまりや鼻水を軽減できることがあります。
また、花粉シーズン前に抗ヒスタミン薬などの対症療法や、免疫療法を取り入れておく と、症状を抑えながらランニングを続けやすくなりますよ。
Q.ランニングをすると鼻づまりが治るのはなぜ?
ランニング前は鼻が詰まっていたのに、走り始めると次第に鼻が通るようになるという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、運動によって血流が促進され、鼻の粘膜の腫れが一時的に改善されるためだと考えられます。
ただし、花粉シーズン以外でも頻繁に鼻づまりが起こる場合は、花粉症ではなく「血管運動性鼻炎」の可能性もあります。この鼻炎は気温差や運動によって症状が変化しやすく、アレルギーとは異なる仕組みで発症します。鼻づまりが慢性的に続く場合は、一度耳鼻科で診察を受けてみるのをおすすめします。
花粉症は怖くない!対策を取ってランニングを楽しもう
花粉シーズンが近づくと、花粉症の症状のつらさだけでなく、行動の制限によるストレスを感じる方も多いでしょう。しかし、適切な対策をすれば、花粉症の時期でも快適にランニングを続けることが可能です。