有酸素能力を高めると病気に強いカラダに
有酸素運動というと、激しくないけれど長い時間かけて行う運動のイメージがあります。忙しい現代人にとってなかなか“長い時間”をかけられないという声も聞かれます。でも、健康の観点からいえば、やはり時間をかけた運動で培われる全身の持久力の強化はとても重要です。
2017年5月に、運動と病気の関連についての研究で、「全身持久力」の高い人は病気に強いということが明らかになりました。「全身持久力」とは、言い替えれば「スタミナがある」とか「粘り強い」ということ。体力測定と定期健康診断を長年追跡した結果、全身持久力が高い人ほど生活習慣病のひとつである糖尿病のリスクが低いという可能性が出ました。
「全身持久力」はエネルギーをつくるのに必要な酸素をカラダに取り込む力(有酸素能力)で評価されます。厚生労働省の資料にも、有酸素能力が高く、酸素の摂取量が多い人はそれだけ全身持久力が高いことになり、病気に強く生命力があるとされています。
全身持久力を効果的に高める運動とは
全身持久力を高めるには運動習慣が必要です。しかし、運動したいという気持ちはあっても、まとまった時間がなかなかとれなくて…という人も多いのでは? そんな人に朗報です。「全力でたった1分の運動は、45分の中等度の運動を行ったときと同じくらいの効果が得られるかも」という研究報告がありました。
この研究では、有酸素能力を「最大酸素摂取量」で見ていますが、どちらの運動でもこの数値が同程度に増えたのです。同時に、防衛体力の高まりを思わせる結果も確認されました。
たった6秒間の高強度運動の繰り返しで効果が!
全身持久力を高めるための一般的な方法としては、マラソンやジョギングなどの長時間運動だけをイメージすると思いますが、実はそれに限ったことではありません。その例として、ここに興味深い研究報告が2つあります。
●全力で1分の運動=中等度で45分の運動 って本当?
カナダで行われた研究では、デスクワーク中心の男性(平均27歳)を対象に、自転車エルゴメーター(エアロバイク)で、1分間(2分間隔で20秒×3回)全力でペダルをこいだ人と、息が切れない程度で45分間ペダルをこぎ続けた人を比較しました。結果はなんと、最大酸素摂取量も、病気のリスクも、細胞のエネルギーを作るパワーも同レベルだったそう。どちらの運動法でも同じくらいの健康増進効果が得られたというのです!
45分頑張るよりも、全力で20秒×3回のトレーニングに魅力を感じる人が多いのでは?
●高齢者はたった“1セット6秒”の運動でも有効
とはいえこの研究、20~30代の男性が対象だからいい結果が出たのでは?と思う人もいるかもしれませんね。でも「高齢者が"たった1セット6秒"の高強度運動を行っても有効」という研究報告もあるのです。
イギリスでは、65歳前後の男女が自転車エルゴメーターを全力で6秒だけこぎ、1分以上休憩をとってからまた6秒こぐという運動を継続するという研究が行われました。そして、たった6秒の運動の継続だけでも血圧の低下など生活習慣病が改善され、若々しく活動的になったという結果が。
こうした研究は、いくつになっても運動が健康に欠かせないだけでなく、運動を始めるのは、いくつになっても遅すぎることはない!ということを物語っています。
時間がないとあきらめず、少しの時間でもそれを有効に使い、強いカラダづくりに活かしましょう!
いかがでしたか? 長時間の有酸素運動も、短時間の全力運動も、どちらもカラダにプラスなのは間違いありませんね。ただし、全力で自転車をこぐというのは短時間でも心肺機能や筋肉に大きな負荷をかけてしまうので、ある程度の運動習慣ができてから試してみるのがおすすめです。
また運動効果を上げるためには自分の「コンディション」を知ることも大切です。